農地を相続することになりましたが、農業を行うつもりはありません。手続きはどうなるのでしょうか。

先般、叔父が他界しました。


叔父は生前、「相続のことは○○法律事務所に任せているから、自分が死んだらそこに連絡をしてくれ」と言っておりました。そこで〇〇法律事務所に連絡を取ったところ、叔父は△△信用金庫に預けている定期預金500万円については檀家を務める寺院に寄付、残りの全財産については私に相続させる旨の遺言を遺していたと知らされました。確かに、叔父と先に亡くなった叔母の間には子供がおらず、叔父の兄である父も既に他界していることから、叔父が私を相続人に指定したことは納得ができます。


叔父の遺産は大半が7ヘクタールもの農地であり、その大半を近隣の人が耕作しています。そして、農地の相続は他の不動産と異なり、行政から許可を得るなど煩わしい点が多いなどと聞いたことがあります。


私は相続放棄をするつもりはありませんが、今後も自営業者としての生活を優先させたいと考えています。したがって、農地は今までどおり近隣の人に貸したままの状態にしておくつもりです。それでも、農地を相続する際は行政から許可を得るための面倒な手続きが必要なのでしょうか。そもそも、農業をしない私が農地の相続人になれるのでしょうか。

公開日時 : 2018年12月18日
カテゴリー : 相続に関係すること

ご相談内容を伺う限り、叔父様の遺言は寺院の寄付分以外は財産を特定せず、ご相談者様に残りの全財産を相続させる旨の内容であると推察します。その場合、本件相続はご相談者様への包括贈与となるため、相続登記については農業委員会(農地に関する事務を行う行政委員会)の許可を得る必要はありません。


まず、本件相続がご相談者様への包括遺贈となる根拠をご説明します。


判例(東京地裁判平10・6・26)によりますと、その要旨は「遺言によって、全財産のうち特定されたごく一部について受遺者(亡くなった人から財産を受け取る人)甲を指定したとしても、この一部を除く全ての財産について特定の受遺者乙について遺贈するのであれば、受遺者甲が受け取る分以外は亡くなった人による受遺者乙への包括贈与に該当する」というものです。これにより、ご相談者様が受け取る財産は叔父様からの包括贈与と解釈することが可能なのです。


また、農地の権利移転等を規定する農地法第3条によりますと、包括遺贈で農地を取得する場合は農業委員会からの許可の取得は必要とされていません。ただし、この場合でも農業委員会へ農地を相続する旨の「届出」は最低限必要になりますので、この点は注意してください。


ただし、ご相談者様が相続税納税猶予などの特例を受けることができる「農業相続人」となれるかについては、農業委員会の審査を経て農業相続人として適格との証明を得ることが必要です。


ご相談者様は自営業者としての生活を優先されたいとのことですが、例えば土日祝日や農繁期などに農業に従事するのであれば、農業相続人として認められる可能性は高くなります。また、仮にご相談者様が農業に全く従事しないとしても、農業の事業主として各種方針の決定に重要な影響力を持つと認められれば、同様に農業相続人として認められる可能性は高くなります。税金のことを考慮すれば、本業である自営業が多忙な中でも可能な限り農業に関与することをお勧めします。


いずれにせよ、農地の遺贈を受ける以上は農業委員会との各種のやり取りは避けられません。面倒とお考えかも知れませんが、ご相談者様に無用な不利益が出ないように誠実に対応してください。

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