相続税対策のために、突然夫がアパートを建てると言い出しました

夫は木彫り職人であり、自宅の敷地120坪中およそ70坪を使った築40年以上の作業場で、長年1人で仕事をしてきました。世間で言う、一人親方です。


夫は加齢のため以前から仕事を辞めたいと言っておりましたが、誰に吹き込まれたのか「仕事を辞めて作業場をアパートにする。そのほうが相続税が安くなるし、家賃収入で相続税の資金を貯めることができる」などと言い出しました。


自宅は都心5区の一角で最寄駅から近いため、夫が死んだら高額の相続税が私と一人息子に課されることは想像できます。


また、私たちには一定度の貯金はありますが、夫が仕事を辞めたら収入は国民年金のみとなるため、アパートによる家賃収入があれば何かと安心です。


しかし、アパートを建てることで相続税が安くなる理由が今ひとつ理解できません。それに、ほかに何か良い相続対策は無いのでしょうか。

公開日時 : 2018年07月23日
カテゴリー : 相続

ご主人様のおっしゃっていることは、少なくとも土地の相続税については間違ってはおりません。


相続税は、税務署が計算した土地の値段(相続税評価額といいます)に応じた額が課されます。


詳しい計算式は省略しますが、税務署が計算したお客様の70坪分の土地の値段が2億円だったと仮定しましょう。これを自宅用敷地、すなわち自用地(じようち)として評価された場合の値段とします。


相続税評価額はその土地を自宅用として使用している場合と、アパートなどを建て人に貸している場合で異なります。具体的には、前者のような「自用地」よりも後者のような「貸家建付地」の方が相続税評価額は低くなるのです。


では、自用地で2億円の評価であるお客様の土地70坪を、アパートにして貸宅地とした場合の相続税評価額を試算してみましょう。


貸家建付地評価額は、以下の公式に基づいて計算します。

自用地評価額×(1-借地権割合×借家権割合×賃貸割合)貸家建付地評価額


お客様がお住まいである都心5区(千代田区、港区、中央区、新宿区、渋谷区)の貸家建付地評価の計算では、概ね借地権割合は60%、借家権割合は30%、賃貸割合は100%とすることが妥当です。


これに基づき計算しますと、貸家建付地評価額は1億6,400万円となります。自宅のままと比べて2割弱低くなり、これに比例して相続税は安くなります(実際の相続税試算は、税理士などの専門家にご依頼ください)。


以上が、土地についての相続税評価額です。


一方、ご自宅敷地にある作業場は築40年以上とのことで、相続税評価額はほぼゼロと考えられます。しかしながら、アパートを建てるとその分相続税評価額が加わることに注意してください。


また、銀行からの融資などで建設する場合は、事業として成り立つか入念に収支を計算してください。収入源としてアパートを建てたつもりでも、想定したような収入があがらず借入金の返済や利息などで赤字となってしまったら、元も子もありません。


以上を考慮すると、もしお客様ご夫妻の今後の生活資金について十分な蓄えがあるのならば、わざわざアパートを建設することの必要性に疑問を感じます。


その場合の対案は、現時点で相続税納税資金の不足が明らかであれば、ご主人様の生前に作業場として使っていた敷地の一部または全部を売却することです。特に現在は不動産マーケットが活況であるため高値での売却が期待できることから、相続税納税資金に加え今後の生活資金とすることも期待できます。


アパート建設が得策か、敷地の売却が適切か、ご主人様と話し合ってみてはいかがでしょうか。

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