不動産売却みんなのQ&A
2020.10.22
相続について
農地法第5条の許可が出ていない土地の相続は、どうなるのでしょうか
父は電気工事業を営んでおり、山奥の土地を資材置き場として父の個人名義で購入しましたが、売買契約を締結した直後に急死してしまいました。
そこで、相続手続きのためにこの土地の登記簿謄本や売買契約書を読み込んだところ、この土地は農地法第5条の許可(編集部注:農地の所有者が、農地以外の目的で使う人に売却するために行政から必要となる許可のこと)が農業委員会から出ることを前提とした売買契約であり、すでに売買代金は支払い済みであるにも関わらず所有権は父に完全に移っていない状態でした。
また、農業委員会に農地法第5条の認可が出ているかどうかを問い合わせたところ、「まだ審査中。特殊な農用地であることから、向こう1年程度掛かる見込み」との回答でした。
相続税の申告期限は、あと数ヶ月後に迫っています。この土地はどのような扱いになるのでしょうか?所有権が父に移っていないのにも関わらず、父の土地として相続することになるのでしょうか?
そこで、相続手続きのためにこの土地の登記簿謄本や売買契約書を読み込んだところ、この土地は農地法第5条の許可(編集部注:農地の所有者が、農地以外の目的で使う人に売却するために行政から必要となる許可のこと)が農業委員会から出ることを前提とした売買契約であり、すでに売買代金は支払い済みであるにも関わらず所有権は父に完全に移っていない状態でした。
また、農業委員会に農地法第5条の認可が出ているかどうかを問い合わせたところ、「まだ審査中。特殊な農用地であることから、向こう1年程度掛かる見込み」との回答でした。
相続税の申告期限は、あと数ヶ月後に迫っています。この土地はどのような扱いになるのでしょうか?所有権が父に移っていないのにも関わらず、父の土地として相続することになるのでしょうか?
相続税の申告において、本件土地は売主に対するお父様・ひいては相続人様の「所有権移転請求権(債権)」、つまり売主に対して本件土地の所有権を引き渡すように請求する権利となります。奇妙に感じられるかもしれませんが、不動産としては扱われないのです。
この根拠として、いくつかの判例があります。その要旨をご紹介しましょう。
- 農地の売買については売主・買主に農地法所定の許可が出ない限り、所有権移転の効力は生じない。
- それに代わり、売買契約の成立と同時に買主は売主に対し「所有権移転請求権」などが生じる。
- したがって、亡くなった人が生前に売買契約を締結していたとしても、生前に所有権移転の認可を受けていない限り亡くなった人の所有物ではないので、当該農地は不動産としての相続税課税対象とはならない。
- この請求権の相続税評価額は、よほどの事情が無い限り買主の取得価額となる。
(以上、名古屋地裁昭55・3・24、および同控訴審昭56・10・28)
- 農地法上の許可が前提の農地の売買で、その許可のない間の買主の権利は、売主に対する所有権移転請求権に過ぎない。法律上は、「債権的権利たる財産」としての評価となる。
(以上、東京高裁昭55・5・21)
なお、農地法第5条許可申請の結果によらず、本件売買契約の売主に対する義務は相続人が負うことになります。まずは、不動産仲介会社または売主に対して連絡を取り、お父様の相続が発生したことを伝えてください。そして、農地法第5条認可申請の結果が出た際の対応についてご相談ください。
認可申請の許可が出た場合、認可申請書に添付した事業計画通りに転用事業を行なっていない場合、農地法に違反することとなるため、原状回復等の措置を講ずる必要が発生する点、また、原状回復命令に違反した場合には罰金・懲役の適用があるため、速やかに対処して頂くことをおすすめします。
また、相続税申告の際は本件について税務署にしっかりとご説明ください。ただし、本件の特殊事情を考慮すると税理士に代理を依頼した方が税務署とのやり取りはスムーズに進むと考えられますので、こちらについてもご検討ください。
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