不動産売却みんなのQ&A
相続する不動産の名義が信託銀行でした。どうすれば良いですか?
夫は自宅の他に、ビルを2棟保有していました。そのうちの一つについて残っていた登記簿謄本を見てみると、所有者が信託銀行になっていました。また、その土地について夫と信託銀行が締結した信託契約書という書類が見つかり、その契約書にはビルの建築に関する記述もありました。
これはどういうことなのでしょうか。
もしかして夫が信託銀行からビルを建築するための融資を受けて、それが返済できなくなって差し押さえられたので、所有者が信託銀行になっているのでしょうか。生前、夫は「あのビルの建築資金はもう完済したから心配いらない」と確かに言っていたのですが…。
また、このビルの相続手続きをどのようにすればよいのかわかりません。相続税にも影響が出るのでしょうか。
登記簿謄本上の所有者が信託銀行で、さらに土地に関する信託契約書があることから、そのビルはご主人様と信託銀行の「土地信託契約」に基づき建設されたものと考えられます。
土地信託とは、信託銀行が依頼者から土地を信託という形で預かり、その土地に信託銀行がビルなどを建設します。そのビルなどから得られる賃料収益などを、各種費用を控除した後に依頼者に配当します。つまり、依頼者の保有する土地の有効活用を信託銀行が有償で代行するサービスです。
法的な根拠や詳細な制度の説明などは割愛しますが、この土地信託契約により信託銀行が依頼者から土地の信託を受けると、登記簿謄本上の名義は信託銀行に変わります。本件ビルの名義人がご主人様ではなく信託銀行であるのは、このためなのです。
しかし、本件ビルの実質的な所有者は土地・建物ともにご主人様であることは変わりありません。おそらくご相談者様がご覧になっている登記簿謄本は、ご主人様が昔に取得されたものだと思われます。法務局より最新の登記簿謄本を取得すると「信託目録」の欄があり、その中に「受益者」としてご主人様の住所・氏名が記載されているはずです。
また、本件ビルから得られる賃料収入は、各種費用を除いた分が信託銀行よりご主人様に定期的に支払われているはずですので、信託銀行からの各種通知をご確認ください。それが信託銀行に差し押さえられているわけではない証左にもなります。
また、土地信託契約の対象となっている土地・建物の相続税計算上の評価額は、土地信託を契約していない場合と同様に計算されます。また、実質的な所有者である受益者としてのご主人様の地位は、信託目録の書き換えによりご相談者様に移ります。
今後のお手続きについては、まず信託銀行にご一報ください。ご主人様の死亡が信託契約の終了要因となっていることも考えられますので、信託契約書をよくお読みになりながら信託銀行と相続手続きを進めてください。
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