自分の土地に他人の排水管が!?放置は危険?法律・費用・対処法を専門家が徹底解説

2026.01.29

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「自宅の建て替えを計画していたら、図面にない配管が出てきた…」

「土地を売却しようと調査したら、お隣さんの排水管が自分の敷地を通っていた…」

このような状況に直面したら、多くの方が戸惑い、不安に感じるのではないでしょうか。

自分の土地なのに、なぜ他人のインフラが存在するのか、撤去はできるのか、費用は誰が持つのか、疑問は尽きません。

この記事では、自分の土地に他人の排水管が埋まっているという複雑な問題について、法律の基本的な考え方、具体的な解決ステップ、費用負担の考え方、将来のトラブルを防ぐための予防策を、不動産の専門家がわかりやすく解説します。

問題を正しく理解し、冷静に対処するための知識を身につけましょう。

なぜ?自分の土地に他人の排水管が埋まっている主な原因

そもそも、なぜ自分の土地に見ず知らずの配管が埋まっているのでしょうか。

多くの場合、そこには悪意ではなく、過去のさまざまな経緯が関係しています。

感情的に対立する前に、まずは冷静にその背景を探ることが、円満な解決への第一歩となります。

考えられる主な原因をいくつか見ていきましょう。

昔の口約束や慣習が原因のケース

数十年前の日本では、隣人との関係が今よりも密接でした。

その当時、土地の所有者同士が良好な関係性から「お互い様」の精神で、書面を交わさずに排水管の設置を口頭で許可するケースは珍しくありませんでした。

また、地域によっては慣習として黙認されていたこともあります。

しかし、土地の所有者が代々変わるうちに、その口約束は忘れ去られてしまいます。

こうして、かつての善意が、新しい所有者にとっては「権利関係の不明な越境物」という問題に変わってしまうのです。

土地の分筆や造成工事によるケース

もともと一つだった広大な土地を親子や兄弟で分筆して相続するような場合も、問題が発生することがあります。

分筆する際に、既存の排水管の位置を考慮せずに境界線を引いてしまい、結果として配管が隣地を越境する形になるのです。

また、大規模な宅地造成が行われた際、開発業者が工事の効率を優先して配管を設置し、その後の区画割によって越境状態が生じることも考えられます。

これらのケースでは、計画段階での確認不足が後のトラブルに繋がっています。

知っておきたい法律の知識|所有権と受忍義務のバランス

「自分の土地なのだから、勝手に埋まっている配管はすぐに撤去できるはず」と考えるのは自然なことです。

しかし、日本の法律では、土地の所有権が絶対的なものである一方、隣人同士が社会生活を円滑に送るための調整ルール(相隣関係)も非常に重視されています。

この問題は、所有者の「権利」と、隣人が生活するために「受忍すべき義務」のバランスをどう取るかという視点で考える必要があります。

関連する法律の基本的な考え方を見てみましょう。

民法が定める排水の権利と義務(余水排池権・地役権)

民法には、隣接する土地との関係を調整するためのルールがいくつか定められています。

例えば、高低差のある土地では、高地の所有者が生活排水などを流すために、低地の土地を通過させることができる権利が認められる場合があります。

これを「余水排池権(よすいはいちけん)」と呼びます(民法第220条)。

ただし、この権利を行使する側は、低地の所有者にとって最も損害が少ない場所と方法を選ばなければならないとされています。

また、当事者間の合意によって、特定の目的(通行や配管設置など)のために他人の土地を利用する権利として「地役権(ちえきけん)」を設定することも可能です。

地役権は登記することができるため、所有者が変わっても権利が引き継がれるという特徴があります。

権利の種類 根拠 特徴 登記
余水排池権 民法第220条 法律上当然に認められる場合がある権利。高地から低地への排水に限られるケースが多い。 不要
地役権 当事者の合意 合意内容に基づき設定される権利。配管の設置や維持管理など、目的を具体的に定められる。 可能(推奨)

公共インフラとしてのルール(下水道法)

この問題は、単なる個人間のトラブルに留まらない側面も持っています。

特に、自治体が公共下水道を整備した地域では、下水道法という法律が関わってきます。

下水道法では、区域内の土地所有者は、その土地の下水を公共下水道に流入させることが義務付けられています(同法第10条)。

他人の土地を通らなければ公共下水道に接続することが物理的・経済的に困難な場合、下水道法第11条により、その土地や設備を使用する権利が認められています。

これも「余水排池権」と同様に、他人の土地にとって最も損害が少ない方法を選ぶ必要があります。

【2023年4月施行】改正民法でライフライン設置権が明文化

近年の法改正で、この問題に関する重要なルールが新設されました。

2023年4月1日に施行された改正民法では、電気、ガス、水道といったライフラインを自分の土地に引き込むために、他の土地に設備を設置したり、他人の設備を使用したりする権利が明確に規定されたのです(民法第213条の2)。

これは、現代社会においてライフラインが生活に不可欠であることを法律が正式に認めたもので、排水管の問題にも適用される可能性があります。

ただし、この権利も無条件ではなく、以下の点を満たす必要があります。

  • 他の土地を経由しなければライフラインの供給を受けられないこと
  • 設備を設置する場所や方法は、他の土地への損害が最も少ないものを選ぶこと
  • 必要に応じて、土地の所有者に対して償金を支払うこと

この新しいルールが実際のトラブルでどのように運用されるか、今後の判例の蓄積が注目されます。

放置は危険!排水管越境が引き起こす具体的なトラブル事例

法律のルールがわかっても、「今すぐ困っていないなら、そのままでも良いのでは?」と思うかもしれません。

しかし、この問題を放置すると、将来的に深刻なトラブルに発展する可能性があります。

私たち不動産の専門家が現場で見てきた、よくあるトラブル事例をご紹介します。

事前にリスクを知っておくことが、冷静な判断につながります。

事例1:不動産売却時に発覚し、売買価格に影響を及ぼした

土地や建物を売却しようと買主が見つかり、契約直前の調査で排水管の越境が発覚するケースです(あくまで一例です)。

買主からは「問題が解決するまで契約できない」と言われたり、資産価値が低いと判断され大幅な値引きを要求されることがあります。

もし、売主が越境の事実を知りながら買主に伝えなかった場合、売却後に「契約不適合責任」を問われ、損害賠償や契約解除に至る可能性も否定できません。

事例2:新築・リフォーム工事で邪魔になり、計画変更を余儀なくされた

自分の土地に新しい家を建てようと基礎工事を始めたところ、地中から図面にない配管が出てくるケースです(あくまで一例です)。

この配管が隣地のものであることが判明し、工事は一時中断せざるを得ません。

隣地所有者との移設交渉には時間がかかることが多く、その間は工事を進められません。

結果的に、建物の設計変更が必要になったり、工期が大幅に遅れて余計な費用が発生したりするリスクがあります。

事例3:排水管の老朽化で水漏れ・詰まりが発生し、責任問題に発展した

最も深刻なのが、地中の排水管そのものがトラブルを起こすケースです(あくまで一例です)。

古い排水管が老朽化して破損し、自分の土地で汚水が漏れ出したり、詰まりによって水が逆流したりすることがあります。

地盤が緩んだり、悪臭が発生したりと直接的な被害が生じるだけでなく、修理費用の負担や原状回復の方法を巡って、隣人との関係が決定的に悪化してしまう可能性があります。

トラブル解決に向けた具体的アクションプラン【3ステップ】

もし排水管の越境が判明したら、どう行動すれば良いのでしょうか。

感情的にならず、順を追って冷静に対応することが、円満な解決への何よりの近道です。

私たちイエステーションが推奨する、実践的なアクションプランを3つのステップでご紹介します。

ステップ 内容 ポイント
1 事実確認と資料収集 客観的なデータで現状を正確に把握する
2 隣地所有者との話し合い 感情的にならず、冷静に対話の場を持つ
3 費用負担の交渉 公平な視点で、お互いが納得できる落としどころを探る

STEP1:事実確認と資料収集(登記簿・公図・測量図など)

まず最初に行うべきは、現状を正確に把握することです。

法務局で、ご自身の土地と隣地の「登記簿謄本」「公図」「地積測量図」などを取得し、登記上の境界線がどこにあるかを確認しましょう。

これらの資料だけでは現地の状況が不明確な場合や、境界標が見当たらない場合は、専門家である「土地家屋調査士」に依頼して、現況を測量してもらうことをお勧めします。

客観的なデータに基づいて話を進めることが、後の交渉をスムーズにします。

STEP2:隣地所有者との話し合いと「覚書」作成

客観的な資料が揃ったら、隣地の所有者に話し合いを申し入れましょう。

その際は、高圧的な態度ではなく、あくまで「今後のために確認しておきたい」という姿勢で、冷静に対話することが大切です。

話し合いで何らかの合意に至った場合は、その内容を必ず書面に残しておく必要があります。

【覚書に盛り込むべき主な項目】

  • 越境している排水管の所有者と位置の確認
  • 今後も排水管の使用を認めるか、または撤去・移設するかの合意
  • 排水管の維持管理や修理が発生した場合の責任と費用負担
  • 将来、土地の所有者が変わった場合も合意内容を引き継ぐこと

このような「覚書」や「合意書」を交わしておくことで、将来のトラブルを防ぐ効果が期待できます。

STEP3:撤去・移設の費用負担はどう決まる?交渉のポイント

撤去や移設工事を行う場合、最も揉めやすいのが費用負担の問題です。

この点について法律に明確な定めはないため、基本的には当事者間の話し合いによって決めることになります。

一般的な考え方としては、越境している側に主な原因がある場合はその所有者負担、土地の利用(建築など)のために移設を求める場合は利益を受ける側(つまり自分)が負担する、というケースが多いようです。

過去の判例などを参考にしながら、お互いの状況を考慮し、公平な負担割合を探ることが交渉のポイントとなります。

ケースによっては折半や、一部負担といった形での決着も考えられます。

当事者だけで解決困難な場合は、迷わず専門家へ相談を

当事者間の話し合いがまとまらない場合や、相手が話し合いに応じてくれない場合、法的な手続きが必要になりそうな場合は、無理に自分たちだけで解決しようとせず、専門家の力を借りましょう。

専門家 主な役割
弁護士 法律的なアドバイス、相手との交渉代理、調停や訴訟の手続き
司法書士 登記(地役権設定など)に関する手続き、簡易裁判所での代理業務
土地家屋調査士 土地の境界確定測量、図面の作成
不動産会社 売却を検討している場合の市場動向や解決策のアドバイス

私たちイエステーションのような地域密着の不動産会社は、こうした問題に詳しい専門家とのネットワークも持っています。

まずはお近くの不動産のプロに「身近な相談相手」として声をかけてみるのも一つの方法です。

まとめ:将来のトラブルを防ぐために今できること

自分の土地に他人の排水管が存在する問題は、法律や権利関係が複雑に絡み合うデリケートな問題です。

重要なのは、問題を放置せず、発覚した時点で早期に対応を開始することです。

客観的な事実を確認し、隣人と冷静に話し合うことが解決の基本となります。

そして、これから不動産を購入・売却する方は、契約前に地中の埋設物についてもしっかりと調査・確認することが、将来のトラブルを防ぐ最大の防御策と言えるでしょう。

日頃から隣人との良好な関係を築いておくことも、いざという時に円滑な話し合いを進めるための大切な要素です。


本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の状況に対する判断や結果を保証するものではありません。実際の不動産取引・税務・法律判断については、税理士・司法書士・弁護士などの専門家へご相談ください。

 

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