相続した承役地の不動産売却ガイド|損しないための手続きと専門家相談のポイント
親から大切な不動産を相続したものの、その土地が「承役地(しょうえきち)」だと知って、戸惑いや不安を感じていませんか。
「承役地って、何?」
「普通の土地と同じように売却できるのだろうか…」
「価値が大幅に下がって、損をしてしまうのではないか?」
専門的な言葉や複雑な権利関係を前に、一人で悩みを抱えている方も少なくないでしょう。
ご安心ください。
この記事では、承役地の基本知識から、相続や売却で損をしないための税金の知識、そして具体的な売却ステップまで、専門外の方でも理解できるよう一つひとつ丁寧に解説します。
この記事を読めば、あなたが抱える精神的・金銭的な負担を軽くし、円満な相続と有利な売却を実現するための具体的な道筋が見えてくるはずです。

承役地とは?相続で知るべき基本知識
まずは、今回のテーマの根幹である「承役地」とは一体何なのか、基本的な知識から確認していきましょう。
この言葉の意味を正確に理解することが、今後の相続や売却手続きをスムーズに進めるための第一歩となります。
難しく考えず、まずはご自身の土地がどのような状況にあるのかを把握することから始めましょう。
承役地と地役権の仕組みをわかりやすく解説
承役地とは、簡単に言うと「他人の土地の便益のために、利用に一定の制限がかかっている土地」のことです。
承役地(しょうえきち)とは、地役権という権利に関連して使われる不動産用語です。この権利は民法第280条で「地役権(ちえきけん)」として定められており、承役地と、便益を受ける側の「要役地(ようえきち)」は常にセットの関係にあります 。
| 項目 | 説明 | 具体例 |
|---|---|---|
| 要役地 | 他人の土地を利用して便益を受ける側の土地 | 袋地(公道に出るために他人の土地を通る必要がある) |
| 承役地 | 自分の土地を利用させる側の土地 | 要役地の所有者が通行するために利用される土地 |
| 地役権 | 要役地の便益のために、承役地を利用できる権利 | 通行地役権、送電線のための地役権、日照地役権など |
例えば、公道に出るために他人の土地を通らなければならない「袋地(要役地)」があったとします。
このとき、通行のために利用される土地が「承役地」となり、袋地の所有者は承役地を通行できる「地役権」を持っていることになります。
承役地の所有者は、この地役権の範囲内で土地の利用を認めなければならない義務を負うのです。
具体的な承役地の例
通行地役権: 袋地(公道に接していない土地)の所有者が公道へ出るために、隣地の一定の範囲を通路として利用する場合、その通路として利用される側の土地が承役地です。
送排水地役権: 自分の土地の排水のために、他人の土地に排水管を埋設して通す場合、管が埋設される側の土地が承役地です。
空中地役権:この言葉は通称であり、法律上の正式名称ではありませんが、土地の上空の空間を利用する目的で設定される地役権を指します。 最も代表的な事例は、「送電線路敷設のための地役権」です。電力会社が、鉄塔間に高圧の送電線を張る場合等が該当します。 民法上、土地の所有権は、法令の制限内でその土地の上下(空中も含む)に及ぶとされています(民法第207条)。 そのため、送電線が他人の土地の上空を通過する際には、土地所有者の権利を侵害しないよう、電力会社がその土地の「上空部分」を利用する権利を設定しています。
地役権は相続される?登記簿での確認方法
地役権は、特定の個人ではなく「土地そのもの」に付随する権利です。
そのため、土地の所有者が変わっても、相続や売買によって地役権はそのまま新しい所有者に引き継がれます(民法第281条)。
ご自身の土地に地役権が設定されているかを確認するには、法務局で「登記簿謄本(登記事項証明書)」を取得するのが最も確実です。
地役権は、登記簿の「乙区」という権利部に関する事項が記載される部分で確認できます。
| 登記簿の確認箇所 | 記載されている主な内容 |
|---|---|
| 表題部 | 土地の所在地、地番、地目(土地の種類)、地積(面積)など物理的な状況 |
| 権利部(甲区) | 所有権に関する事項(所有者の住所・氏名、所有権移転の経緯など) |
| 権利部(乙区) | 所有権以外の権利に関する事項(抵当権、地役権など) |
登記簿の乙区に「地役権設定」の記載があれば、その土地は承役地です。
「目的」「範囲」といった欄に、どのような目的で、土地のどの部分が利用されるのかが具体的に記載されています。
ただし、当事者間の合意のみで登記されていないケースもあるため、注意が必要です 。
なぜ売れない?承役地の不動産売却が難しい3つの理由
承役地という事実を知ると、「この土地は問題なく売れるのだろうか」という不安がよぎるかもしれません。
残念ながら、承役地は一般的な土地に比べて売却が難しくなる傾向があります。
その背景には、買い手側の視点に立った、明確な3つの理由が存在します。
なぜ売却が難しいのか、その理由を正しく理解することが、効果的な対策を立てるための第一歩となります。
理由1:土地利用の制限と建築上の制約
買い手が土地を購入する最も一般的な目的は、住宅などの建物を建てることです。
しかし、承役地は地役権によって土地の利用方法が制限されているため、買い手の希望通りの建築ができない可能性があります。
例えば、土地の一部が「通行地役権」の範囲に含まれている場合、その部分には建物を建てたり、駐車場にしたりすることができません。
特に、建築基準法上の接道義務(幅員4メートル以上の道路に2メートル以上接すること)を満たしていない土地(旗竿地や袋地など)の場合、承役地であることで「再建築不可」物件となるケースも多く、資産価値は著しく低下します 。
自由に利用できない土地は、買い手にとって魅力が半減してしまうのです。
理由2:隣地トラブルのリスクと買い手の心理
不動産取引において、将来的なトラブルの種は最も避けたい要素の一つです。
承役地は、その性質上、要役地の所有者(隣人など)との関係性が永続的に続きます。
地役権の内容が登記されておらず口約束だけであったり、利用範囲が曖昧だったりすると、後々「言った、言わない」のトラブルに発展するリスクを孕んでいます。
買い手からすれば、購入後に隣人と揉め事を起こす可能性がある土地は、たとえ価格が安くても敬遠したいと考えるのが自然な心理です。
見えない権利関係の負担は、大きなマイナスイメージとなるのです。
理由3:買い手の住宅ローン審査への影響
土地や建物を購入するほとんどの人は、金融機関の住宅ローンを利用します。
しかし、金融機関は融資の際に不動産の担保価値を厳しく審査します。
承役地、特に再建築不可物件などは、利用価値や換金性が低いと見なされ、担保評価が大幅に低くなる傾向があります。
買い主が住宅ローンを組みにくくなる可能性があります。
相続した承役地を円滑に売却する3ステップ
承役地の売却には確かにハードルがありますが、正しい手順を踏めば、円滑に売却することは決して不可能ではありません。
ここからは、実際に相続した承続地を売却するための具体的な行動計画を「3つのステップ」に分けて解説します。
複雑に思えるプロセスも、一つひとつ分解して考えれば、着実に前進することができます。
ステップ1:現状把握と売却戦略の立案
まず最初に行うべきは、ご自身の土地の「現状を正確に把握する」ことです。
以下の書類を準備し、設定されている地役権の具体的な内容を再確認しましょう。
- 登記簿謄本(登記事項証明書):地役権の目的、範囲、登記の有無
- 公図や測量図:地役権が設定されている具体的な場所
- 地役権設定契約書(あれば):当事者間の詳細な取り決め
現状を把握した上で、どのような売却戦略をとるかを検討します。
主な選択肢は以下の3つです。
| 売却戦略 | メリット | デメリット |
|---|---|---|
| 隣地(要役地)所有者に売却 | ・最もスムーズに話が進む可能性が高い ・地役権の問題が解消される |
・価格交渉が難航する可能性がある ・相手に購入意思がないと成立しない |
| 不動産仲介で一般市場に売却 | ・より高い価格で売れる可能性がある ・幅広い買主候補にアプローチできる |
・売却までに時間がかかる ・地役権の制約を理解してくれる買主を見つけるのが難しい |
| 専門の買取業者に売却 | ・スピーディーに現金化できる ・現状のまま(契約不適合責任免責)で売れる |
・仲介に比べて売却価格が安くなる傾向がある |
どの戦略が最適かは、土地の状況やご自身の希望(時間、価格など)によって異なります。
ステップ2:売却価格の相場と値付けのコツ
承役地の売却価格は、地役権による制限の度合いによって大きく左右されます。
一般的には、周辺の同様な土地の市場価格と比較して、3割程度、あるいはそれ以上に低くなることも珍しくありません。
適正な価格を設定するためには、感情論ではなく客観的な根拠が必要です。
そのためには、不動産鑑定士に評価を依頼し、専門的な見地から土地の適正な市場価値を算出してもらうことを強くお勧めします。
鑑定評価書があれば、価格設定の明確な根拠となり、買い手との交渉を有利に進めることができます。
また、売却活動においては、地役権の存在やその内容を隠さずに、正直に買い手へ開示することが極めて重要です。
不利な情報を正直に伝えることで、買い手との信頼関係が構築され、かえってスムーズな取引に繋がります。
ステップ3:信頼できる不動産会社を選ぶ
承役地の売却は、専門的な知識と経験が求められるため、パートナーとなる不動産会社選びが成功の鍵を握ります。
どこの不動産会社でも良いというわけではありません。
以下のポイントを参考に、信頼できる会社を見極めましょう。
- 承役地や「訳あり物件」の売却実績が豊富か
- 地域の情報に精通し、隣地交渉などのノウハウがあるか
- 仲介だけでなく、買取保証など複数の売却プランを提案できるか
- デメリットやリスクについても正直に説明してくれるか
複数の不動産会社に査定を依頼し、担当者の対応や提案内容を比較検討することが重要です。
安易に一番高い査定額を提示した会社に決めるのではなく、なぜその価格なのか、どのような戦略で売却するのか、納得できる説明をしてくれる会社を選びましょう。
損しないための相続税・譲渡所得税の知識
相続した承役地を売却する際には、税金の問題も避けては通れません。
「相続税」と、売却益にかかる「譲渡所得税」。
これらの税金について正しい知識を持つことは、予期せぬ出費を防ぎ、手元に残るお金を最大化するために不可欠です。
知っているか知らないかで、納税額が大きく変わる特例もありますので、しっかりと確認しておきましょう。
相続税評価額を減額できる特例とは?
相続税を計算する際、土地の評価額が基準となります。
地役権が設定された承役地は、その利用価値が制限されているため、相続税評価において評価額を減額することが認められています。
これにより、相続税の負担を軽減できる可能性があります。
評価減の割合は、地役権による制限の度合いによって異なりますが、国税庁の指針では以下のような基準が示されています。
| 制限の内容 | 評価減の割合(目安) |
|---|---|
| 建物の建築が全くできない | 50% |
| 建物の用途、規模等に制限を受ける | 30% |
特に、送電線の真下にある土地(高圧線下地)など、「区分地上権に準ずる地役権」が設定されている場合は、より詳細な計算に基づいて評価額が減額されます [4]。
この評価は非常に専門的であるため、相続税申告の際は、土地評価に詳しい税理士に相談することが不可欠です。
売却益が出た場合の税金と利用できる控除
不動産を売却して得た利益(譲渡所得)には、所得税と住民税がかかります。
しかし、相続した不動産を売却する場合には、税負担を軽減できる特例があります。
それが「取得費加算の特例」です。
これは、支払った相続税の一部を、売却した不動産の取得費に加算できる制度です。
取得費が増えることで、課税対象となる譲渡所得が減り、結果として節税に繋がります。
この特例を受けるには、以下の主な要件を満たす必要があります。
- 相続によって財産を取得した人であること
- その財産を取得した人に相続税が課税されていること
- その財産を、相続開始のあった日の翌日から3年10ヶ月以内に売却していること
相続後、売却を検討している場合は、この期限を意識して計画を進めることが非常に重要です。
専門家への相談で不安解消!承役地売却のパートナー選び
ここまで見てきたように、承役地の相続と売却には、法律、税務、不動産取引の各分野にまたがる専門的な知識が求められます。
これらの複雑な問題を一人で解決しようとすると、時間と労力がかかるだけでなく、思わぬトラブルや金銭的な損失を被るリスクもあります。
重要なのは、一人で抱え込まず、早い段階で各分野の専門家に相談することです。
| 専門家 | 主な相談内容 |
|---|---|
| 税理士 | ・承役地の適正な相続税評価額の算出 ・相続税申告、取得費加算の特例の適用 |
| 弁護士・司法書士 | ・地役権に関する権利関係の整理 ・遺産分割協議、相続登記の手続き |
| 不動産会社 | ・承役地の売却査定、売却戦略の立案 ・隣地交渉、専門買取業者の紹介 |
それぞれの専門家が連携することで、問題に対して総合的かつ最適な解決策を見出すことができます 。
【実績豊富】地域密着のイエステーションが選ばれる理由
承役地のような特殊な事情を抱える不動産の売却を任せるなら、確かな実績と専門性を持つ不動産会社を選ぶことが何よりも重要です。
私たちイエステーションは、お客様の複雑な状況に寄り添い、最適な解決策をご提案します。
| イエステーションが選ばれる理由 | 具体的なサポート内容 |
|---|---|
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イエステーションは、単に物件を仲介するだけではありません。
お客様一人ひとりのライフスタイルや将来設計を考え、売却という選択肢が最善でない場合には、正直にそのことをお伝えします 。
お客様の利益を第一に考える。
それが私たちの揺るぎない哲学です。
まとめ:承役地の相続・売却は一人で悩まず、まずは無料相談から
この記事では、相続した承役地の売却について、基本知識から税金、具体的な売却ステップまでを解説しました。
- 承役地とは、他人の土地のために利用が制限される土地であり、その権利(地役権)は相続される。
- 売却が難しい理由は、土地利用の制限、隣地トラブルのリスク、住宅ローン審査への影響があるため。
- 円滑な売却には、現状把握、適正な価格設定、信頼できる不動産会社選びが不可欠。
- 税金面では、相続税の評価減や売却時の取得費加算の特例を活用することで負担を軽減できる。
承役地の相続と売却は、確かに複雑で不安に感じることも多いでしょう。
しかし、正しい知識を身につけ、適切な手順を踏み、そして何よりも信頼できるパートナーを見つけることで、必ず道は開けます。
もしあなたが今、承役地のことで一人で悩んでいるなら、まずは専門家に相談することから始めてみてください。
イエステーションでは、無料でご相談を承っております。
あなたの不安を、私たちと一緒に解決していきましょう。